13:00を過ぎ、そろそろ、赤岳頂上を後にしなければなりません。
本日(二日目)の目的地は、硫黄岳山荘。
そこまで到達するためには、まだまだ、越えなければならない山が残っています。
「横岳」
です。名前だけ聞くと、ピークは1つ…と思いがちなのですが、これは大違い。
実際には、大小いくつかのピークが連なる山の総称であり、何度も何度も上り下りを繰り返さなければなりません。
また、赤岳~横岳のルートはかなりの難所。鎖場の連続です。
まずは、赤岳山頂を出発し、横岳方面(ほぼ真北になります)に下っていきます。前方には、赤岳展望荘。次回は泊まってみたい人気の宿です。
赤岳展望荘は、風力発電しているようです。風車がからからと回っていて、何だかとても風情があります。
今回は、この山小屋は通過するのみ。奥さんはどんどん歩いていきます。
しばらくして振り返ってみました。すぐ後ろには展望荘が、そして、そのまた後ろにはさっきまでいた赤岳が見えます。がんばって、降りてきたんですねえ(笑)
横岳との稜線上で、もう一枚撮影した赤岳。今回撮影した赤岳の中ではベスト・ショット。もっとも赤岳らしい1枚です。
結局この日、この後、後ろからは誰にも追い抜かれませんでした。時折、稜線を眺めても、誰も後からついてきません。こんな時間から、横岳方面に行くのは遅すぎるということなのでしょうね。
あいかわらず、西の空は天気がよく、今日は北アルプスがずっと見えています。北アルプスに登った方も、きっと晴天に恵まれ、「八ヶ岳が見えるなあ」とこっちを指さしてくれていると思います。
おもわず
「ヤッホー」
と叫びたいところですが、やめました。北アルプスまでは、数十キロはなれていますからねえ。聞こえるわきゃあありません。
奥さんは、伸長したばかりの黒いマムートの帽子が風で飛ばされないように、タオルでほっかむりをしています。ゴルフのキャディーさんみたくなってしまっています。
横岳方面に向かって尾根道は続きます。
御嶽山方面をパノラマ写真風にトリミングしてみました。実際には、ただの24㎜広角で撮っただけです。
横岳までは鎖の連続。手を放したら
「即死」
という箇所が何か所もあります。落ち着いて移動すれば問題ないのですが、高所恐怖症の私にとっては、足のすくむところもありました。
「きょわい~(怖い~)」
と叫びたくなります。この日の一番の難所は、赤岳の登り急斜面の岩稜だと思っていたのですが、大間違い。赤岳~横岳ルートこそ、一番の難所でした。
このへん、写真があまりないのは、要するに、そんな余裕がなかったからなのでしょうね。
いくつかのピークを越え、ようやく、横岳のメイン・ピーク「奥ノ院」に到着。ここが、一応、最高峰ということになっています。実際には、別な地点が最高峰らしいのですが、そこはルートからちょっとはずれているので、普通はみんな、「奥ノ院」で写真をとります。
本当は、ここは2829mないんですけどね。まあ、いいでしょう。
私も奥さんにとってもらいました。
右手で柱によっかかったら、
「ぐらり!」
もうちょっとでぶっ壊してしまうところでした。申し訳ありません。ちゃんと、もとにもどしておきました。
奥ノ院を超えたら、すぐに、硫黄岳山荘かな…などと甘いことを考えていたのですが、ここからがまだまだ長い…
山荘そのものがなかなか見えてきませんでした。なぜか、このころ撮った写真は周辺減光状態。理由は不明です(笑)
ただ、横岳を抜け、硫黄岳が見えてくると、ようやく、青い屋根が目印の硫黄岳山荘が姿を見せました。
すでにこの時点で16:00を回っています。
さすがに、今回は、歩きづめでしたね。日没までに宿について本当に良かった。
日曜日の夜ということもあり、宿泊者はたいへん少数。我々を除いて8名だったかな。他の8名は、みな、宿の夕食を食べています。
しかし、我々は、
「素泊まり」
自炊です。食事をつけるかつけないかで、だいたい1人2,000円くらいの差ですから、自炊すると、夫婦2人で1日4,000円くらいコスト削減できますので。
で、ういたお金で
赤ワインです。
250mlくらいでしょうか。1本500円也。ついで、柿の種も購入。1袋100円也。
結局、足の痛みなど無視して、ワイン3本、チューハイ1本いただきました。
「私は飲まないから」
といっていた奥さんも、私のグラスをちびちび横取りしているうちに、すっかり、酩酊状態。なんともまあ、燃費のいい体ですね。うらやましい(笑)
「さ、寝ようか」
と、とっとと2階の大部屋へ。100人以上が眠れる大きな部屋です。この時点で、まだ19:00前です。寝床には、一人ひとり、番号がついています。
私はというと…
「G-2」
G2号といえば、「科学忍者隊ガッチャマン」でニヒルなサブリーダー役を演じたコンドルのジョー(声:ささきいさお)のコードナンバーです。
「お、おれ、コンドルのジョーだよ、あ、君は、G-1…大鷲のケン(声:森功至)じゃん。そっちが主人公だけど、人気があったのは、コンドルのジョーのほうだよ。俺の勝ちだな」
酔っ払って、「科学忍者隊ガッチャマン」ネタで一人盛り上がる私。
「知ってる? 科学忍者隊って5人いるんだけど、そのうち、ガッチャマンって、G1号大鷲のケンだけを指すんだよ。あとの4人は、科学忍者隊の隊員だけど、ガッチャマンではないということ。案外知られていないんだよね」
「いいから、寝なさい。この酔っぱらい!」
一喝される私。自分だって、人のワインを飲んで、へべれけだったじゃあないか。赤ワインよりも赤い顔したお前さんにそんなことを言われる筋合いはないぞおおおおおお…といいたいけど。ここは我慢我慢。
5分後。奥さんは寝息を立てています。
「G-1号…大鷲のケン…いや、ガッチャマン。たわいない。落ちたな…」
あんまり気持ちよさそうに寝ているのが、しゃくだったので、くすぐって起こしてやろうとも思いましたが、他のお客さんに迷惑なので、やめました。
この山小屋。布団も充実。これなら、寒くなさそうです。
これだけ歩いたんだから、私もすぐに眠れると思っていたのですが、なぜか、目がさえて眠れません。高山ではこういうこと、よくあるんですが…2日連続だと応えます。
「早めに寝て、2:00くらいには起きて星を見たいなあ」
と思っていたので、本当は早く寝たいのですが…
結局、消灯時刻の20:00はおろか、夜半まで眠れませんでした。
ヘッドライトで、談話室から借りてきた『山と渓谷』を何冊読んだことか…
なにせすいていて、まわりに寝ている人がいなかったので、こんなことができたのですが、普通は無理ですね。
「ライト、消してください」
と怒られちゃいます。持ってきたキーボードにiPhoneくっつけて、このブログの内容もだいたいメモしておきました。音が出ないよう、布団をかぶせての打ち込みです。
で、そのまま、起きていればよかったのですが、なぜか、
01:00頃…
ストン!
と寝てしまいました。不覚…
これでは星の写真がとれません。
「はっ」
と気づいたのは04:00を過ぎてからのこと。
「しまった。寝過ごした」
とは思いましたが、まだ、空は真っ暗。北岳に登った8月とは違い、日の出はそうとう遅い時間のはず。まだ間に合うかもしれません。
そっと窓を開けてみると、満点の星。北斗七星が東の空から登ってきます。
「すわ! 出陣!!!」
枕元に用意したダウンを着込み、機材を持って外に出てみました。
奥さんをはじめ、まだ、みんな寝ている人ばかりなので、静かに、そっと、歩きます。
そうですそうです。まるで、科学忍者隊のように、歩いて、外に向かいます。
「歩くたびに、ダウンの羽毛が抜け落ちたりすると、本当のガッチャマンみたいだなあ」
などとくだらないことを考えながら、宿の外へと向かいます。
↑ たしか、CMに入る前と入った後に、こんなジングルが流れましたよね。ささきいさおの声で(笑)
<次回に続く>
期待通りの山小屋宿泊リポートありがとうございます!
息をひそめて最上級の楽しみに浸る喜びが伝わってきましたよ。
そりゃ眠れませんよね。
満点の星空の写真も楽しみにしてま~す。
楽しさが伝わってきました!ありがとうございます!